2012年4月26日木曜日

金、1000ドル乗せ目前での需要失速

金価格が年明けから騰勢を強め、ロンドン渡しの現物は1980年1月に付けた1トロイオンス850ドルの過去最高値を更新した。900ドルもあっさり超え、一時は1000ドル乗せも時間の問題といわれた。だが高騰の反動で宝飾品など実需が冷え込んでいることが浮き彫りになった。

金の調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のまとめによると、2007年10―12月期の世界需要は843トンで前年同期を17%下回った。07年通年では4%増えたが、1―9月までに13%伸びていた増加基調からは一転した。

最大消費国であるインドの減速が大きい。1―9月の需要は前年同期比40%増えたが、10―12月期は同64%減と急ブレーキがかかった。インドでは今年1月の輸入量も5トンと前年同月の8%にとどまったという。値動きの荒さが敬遠され、買い控えが広がった。

米国も10―12月の需要は17%減の110トンと失速した。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題による不安心理が、堅調だった高額品の消費にも及び、宝飾品の購買意欲が落ち込んだ。この結果、通年での金消費量は中国に抜かれて世界3位に転落した。

7―9月期のロンドン金価格の平均は680ドル。10―12月期は786ドル。800ドル近辺の水準は、宝飾品用途としてはまだ認められていないといえる。

昨年からの原油や貴金属など商品価格の高騰は、米国経済が減速しても新興国が補うというデカップリング(非連動)論が一つの根拠となっていた。ただ年明け後も大手金融機関の損失計上が続き、雇用や消費の悪化を示す指標が出るに及び、米国に合わせて新興国経済も減速するとするリカップリング(再連動)論ががぜん現実味を帯びてきた。

米国景気が後退すれば、対米輸出に支えられた新興国経済にも影響が及ぶ。株や債券への不安を背景に分散投資先としての金需要は高まる可能性があるが、宝飾品需要の落ち込みが遠からず注目されよう。逆にサブプライムローン問題が解決に向かえば、信用不安は一巡、金に流れていた資金が株式市場などに逆流することもあり得る。

金市場関係者の間では「年内に一度は1000ドルを見ないと収まらない」というのが共通認識となっている。ただ実需の急減速は、仮に大台を付けても定着は難しいことを暗示しているといえそうだ。