2015年5月15日金曜日

経済原則に従って既存の制度・慣行が改められていく可能性

外国人労働者の流人も大きな問題になってきている。正規のビザを持つ労働者は、87年で2万5千人程度だが、不法就労者は10万人にも達するといわれている。円高以後は建設現場の土木作業員、飲食業の皿洗いなどの単純労働での就業者が急増している。とくに東南アジア諸国からの流入が目立つ。確かに、最近の東京では地ド鉄や電車に乗ると、回りに外国人を見かけることが多くなった。マイホームの工事現場で大工さんに話しかけてみたがどうも話が通じない、それもそのはずで日本人ではなかったという話とか、大工の棟梁が大学の教授に、「大学の先生は日本語で仕事ができるからうらやましい」といったという話もある。こうなるのは経済的には当然のことである。供給側から見ると、日本の賃金が世界一だということは、日本に行って働けば世界一の所得を稼ぎ出すことができるということに他ならない。

例えば、「エコノミスト」誌の試算だと、東京の賃令はハンコックの五倍以上となっている。自分の国では想像もできないような高額の賃金を稼ぎ出すことができるのだから、日本にあこかれるのも当然である。もっとも東京で仕事をすると、東京で生活しなければならず、かなり生活費が高くなることを考えると、外から見た日本の高賃金も額面どおりは受けとれない面もある。次に需要側から見ると、目本の企業にとっては円高により海外の労働者をきわめて安く使えるようになった。今ではできれば外国人労働者を雇いたいという企業がずいぶん増えている。89年10月に行なわれた経済企画庁のアンケート調査によると、約三分の一の企業が「外国人雇用に対して、職種に制限をつける必要はない」と答えている。

また、現在外国人を雇用している企業は全体の62.7%に達しており、それ以外の企業でも21.9%が今後外国人を雇用する意向があるとしている。日本では。技能労働者の受け入れは認められているが、単純労働者は原則として受け入れていない。就労を目的として日本に入国が認められているのは、外資系の企業管理者、大学教授、興業活動者、高度な技術提供者、外国料理の料理人などの熟練労働者、外国語教師といった人々に限られている。この問題は経済原則だけで割り切るわけにはいかない問題であり、だからこそむずかしい対応を迫られている。西欧でも人出不足への対応策として外国人労働者に頼る時代があったが、それが失業者のハードコアになってしまったり、受け入れ国で生まれた第二世代の帰る国がなくなったり、異文化同士の摩擦が生じたりといった問題が出ている。外国人労働者の受け入れについては、国民的レベルでの相当の覚悟が必要である。しかし、前述のような経済原則から見ると、外国人労働力が日本の労働市場に参入してくるのは逆らうことのできない流れであるようにみえる。経済の大きな流れに逆らった政策・制度は長続きしないというのがこれまでの経験の教えるところである。長期的にみると、既存の制度・慣行によって経済原則が改められるよりは、経済原則に従って既存の制度・慣行が改められていく可能性が高いと思われる。