2013年8月28日水曜日

欧米人観光客はなぜ沖縄に来ないのか

「入域観光客統計」によれば、沖縄にやって来た外国人観光客は、二〇〇四年が一二・九万人、〇五年が二七万人、〇六年が九・二万人、〇七年が一七・五万人となっている。これを沖縄に来島した総観光客数から割り出すと、最大の〇七年でもわずか三%にすぎない。その前年などたったの一・六%だ。ところが、沖縄を訪れた観光客に尋ねると、たいてい「沖縄にアメリカ兵以外に外国人っていたっけ」という。そうなのだ。たびたび沖縄に行く私でさえ、欧米人観光客に会ったのは数度しかない。最近ではカナダからやってきたカップルだった。これは、外国人観光客=白人と誤解しているからである。

法務省の「出入国管理統計年報」によれば、沖縄にやってくる外国人観光客のうち、台湾人が半分の五三%を占め、それに次ぐのが韓国人だ。あとは中国人とフィリピン人が数%で、アメリカ人が七%となっている。ヨーロッパ人は「その他」に分類されていて数字には出てこない。つまり、数えるほどしかいないということだ。アメリカ人観光客もそれほど目につかないのは、純粋に観光というよりも、米軍基地の関係者ではないかと思われる。極論を承知で書けば、沖縄にやってくる外国人観光客はアジア人だけで、欧米人はほとんど沖縄には関心がないということである。

地元の観光業者に聞くと、台湾人は免税店などで買い物をするのが目的で、韓国人はゴルフだという。豊かになった台湾人がクルーズ船に乗って団体でやってきては、日本の電化製品やブランド品を買い漁っていく。韓国人が多いのは、寒い国から暖かい国でゴルフ三昧に浸りたいからだろう。本題に戻るが、沖縄県が『ビジットおきなわ計画』で、〈欧米地域等についても沖縄の独自性を有する観光資源を活用した誘客促進を図ります〉と書いているのに、欧米人観光客がちっとも沖縄にやってこないのはどうしてだろう。まず宣伝不足が挙げられる。しかし、知人のアメリカ人がこんなことを言った。たった一人の証言だからすべてに当てはめるわけにはいかないが、参考にはなると思う。

「沖縄は亜熱帯気候で自然が素晴らしいと言うが、すべてが中途半端なんだ。那覇はパチンコ屋と自動販売機と排気ガスが充満した街だし、海だってピンポイントで観れば美しいが、全体を眺めたらたいしたことはない。亜熱帯気候なのにのんびりと木陰で過ごせるようなところもなく、高級リゾートホテルも皮一枚はがせば、まがいものが透けてくる。そうそう、高級リゾートホテルで有名なブセナテラスに泊まったが、カフェテラスから見える滝の石垣はプラスチックだったよ」本来の観光とは、そこに住む人の文化を見せること重ねて言うが、観光とは光を観ることである。その光は観る者に感嘆と安らぎを、あるいは心地よさを与えるものであって、目障りなものであってはならない。

そんな景観に乏しいのは、観光で生きていくという毅然としたポリシーがなく、すべてが中途半端なままだからだ。地方都市がまがい物で固めたような町に変わるのは珍しくないが、沖縄ではそれが致命傷になりかねない。日本の観光は素材を宣伝して人を呼んでくれば成り立った。恰好の例がテーマパークだ。スキー場をつくり、温泉を掘り、たくさんの人が来ればたくさんのお金が落ちる。お金が落ちれば町が豊かになるとばかりに、地元とは関係のないテーマパークをつくり、はてにはアダルト産業まで誘致した。それが日本の観光だった。本来の観光とは、そこに住む人の文化を見せることだ。文化とは短期で変わってしまうものではない。目に見えるものも目に見えないものも、時間で簡単に変質しないものが文化であり、それを見せるのが本物の観光なのだと思う。