2014年11月11日火曜日

公正な集中審理を行う意味

それよりも、審理の時間に限界があることを前提に、訴訟に関わるすべての人が必死で手続を進めるため、裁判そのものは遥かに速くなるのです。あとで紹介する模擬陪審裁判でも、実際には約三年かかった民事事件を、たった一日で評決までやってしまいました。

現在も「裁判の迅速化」は求められていますが、それを法律家の心がけだけに任せて、「なるべく速く済ませようよ」などと仲間同士でやっているようでは、裁判は迅速には進みません。ただ単に時間を区切る「計画審理」だけやっていても、迅速な裁判にはなりません。

陪審制によるメリットの第二は、集中審理を行う前提として、必然的にその準備のために徹底的な証拠開示制度が必要となることです。公正な集中審理を実現するには、証拠開示を徹底することが不可欠であって、今の日本でやっているような、限られた証拠だけで裁判をやることは許されません。

一般の人々が裁判に対して最も切実に求めるのは、「真実の究明」でしょう。しかし、真実究明を促進するのは、「誰が裁くか」の問題ではなく、「何か証拠か」の方が大きいのです。つまり、現実には、証拠如何で真相究明が進んだり進まなかったりするので、証拠をできるだけ早く徹底的に集める制度が必要になってきます。

そこで、後述のように、陪審制を導入する場合には、徹底した「証拠開示制度」、すなわち証拠をより広範に、早い段階で提出させる制度が必要不可欠となります。