2015年8月12日水曜日

欧州偏重という異論

当時から、新常任理事国の資格があると目されていたのは日本とドイツだったが、ドイツに対しては、P5の中でも英国とフランスからの反発があった。もしドイツが参入すれば、欧州からの常任理事国は三力国になり、地理的配分から言って欧州偏重という異論が出る可能性があった。その声は、英国、フランスの地位を脅かすかもしれない、という不安がつきまとっていた。さらにイタリアも、ドイツが参入するならその機に合わせて理事国入りを図る構えを見せており、問題が紛糾する恐れがあった。

他方、かねてからブラジル、インドなどの地域大国も、安保理改革が実現すれば常任理事国になる資格があると考えており、日本とドイツが参入すれば、これらの国々も立候補すると見られていた。米国は当時、「ドイツが入れば英国とフランスとの間で問題が生じる。それ以外の国の参入は認められない。日本だけならいいが、そうすれば他の国が黙っていないだろう。まだ時期尚早だ」との立場を取っていた。憲章改正は「パンドラの箱」を開けるようなものであり、ようやく活性化した安保理の動きに水を差すと考えていたのである。その結果、米国連代表部は、日本の意向に対しては好意を示したものの、当時担当だったボルトン国務次官補らが難色を示し、ブッシュ政権にはこの議題を上げなかったと言われる。