2015年10月10日土曜日

東京向けのマンション

ここで新しく考えた独自の手法が三つある。その第一は、商業地域内における住居容積を制限しようというものである。商業地域とは本来、商店、デパート、業務用のビルなどを建てることを予定して定める地域である。したがって容積率も高く、最低でも四〇〇χ、最高は1000%ということになっている。一般には駅に近い便利なところを商業地域に指定しているが、横浜のように東京に近く便利なところでは、本来横浜市にとって必要な業務ビルや商業施設は建たず、そのかわりに東京向けのマンションが立地することが多い。

こうしたマンションが四〇〇%とか、六〇〇%とかの密度で建つと、じつにたいへんなことになる。住宅相互の日照が確保されないのはとうぜんだが、子供たちの遊び場もとれない。がりに五〇〇%の住居が建つということは、大体それと同じ面積ぐらいの小、中学校が必要ということになり、マンションと学校とが交互に建っていなければならなくなるだろう。それにしては、商業用地のようなところでは、学校のようにまとまった大きな土地はえにくいし、また地価玉尚く、とうてい取得は困難である。

現に、磯子駅前に、容研制の出来る以前に、住宅公団が高司住宅を建てたが、これがひじ上うに高容積になるために、地区の学校では収容しきれない。そこで一階に予定していた商業施設をやめてもらい、安く市に譲ってもらって一階部分を一~三年までの低学年用教室にあててみた。いろいろ問題はあるが、高容積とはそうした学校の必要性を意味することを、示しておきたかった。高容積にはしたい、学校はゆっくりとるというわけにはゆかないのである。ヨーロッパの都市では、このような住宅と併用の学校も多い。

また、同じく磯子で高川マンションが複数同時に建つ計画があり。容積制以前ではあったが、なんども交渉の結果、協定をむすび、容積を制限してもらい、小さいながらもこの住宅群に見合う小学校用地を、無償提供してもらった。こうした交渉は長く時間とエネルギーを要する。そうした時期に容積制が生まれたのである。これを活用しない手はない。ところが磯子駅前のようなところは、駅前の広い埋立地であって、用途地域上は商業施設や業務施設があってもよく、商業地域に指定される。そうすると容積は一番低くても、四〇〇%になる。

不動産業者としては、目いっぱい、マンションを建てるだろうが、これでは同じような問題がおきる。それにマンションを建てたい人びとは、四〇〇よりは五〇〇、五〇〇よりは六〇〇%を希望して、圧力をかけてくるであろう。こうした情勢を踏まえて考案したのが、用途別容積制である。もともと商業地域の容積は、商業、業務施設を予定して、高く定めてある。これが住宅となるなら、そんなに高い容積である必要がない。住居環境としてはぎりぎりの環境である二〇〇%を上限にしてよい。現に横浜の住居地域では、二〇〇%を上限としている。