2016年1月13日水曜日

南北首脳が直接会う意味

韓国の金大中大統領は首脳会談後の七月一九日に日本のNHKのインタビューに応じ、北朝鮮との問題は金正日総書記と直接話し合えば解決できることがわかった、と明らかにした。金大中大統領側近の林束源・国家情報院長も、間に立つ金容淳書記に金正日総書記への伝達を頼んでいた事柄がほとんど伝わっていなかった事実が、首脳会談で明らかになったと語っている。

金大中大統領は、その後日本の森喜朗首相にも金正日総書記と直接会談し話し合うことを求めた。南北首脳会談の最大の教訓は、金大中大統領の言葉を借りれば次のようになる。

「北朝鮮との問題は、金正1総書記と会談しなければ解決せず、解決は可能である」韓国と北朝鮮は、これまで首脳同士が直接話し合うことはなかった。南北の首脳が直接語り合い誤解を解くルートと方法が、初めて実現したことは文字通り歴史的成果である。

これは、現代の国際政治の手法でもある。かつてのように、外交官や特使が活躍するよりも、首脳同士が直接会い話をまとめる解決方法が定着しているのである。南北朝鮮の当事者も、ようやく現代の首脳外交の仲間入りを果たしたことになる。

韓国や北朝鮮のこれまでの外交手法は、常に仲介者を求めることであった。実力者や大物、側近と言われる人たちが間に入ったり、そうした人物を探して最高指導者に意向を伝えてもらうやり方である。

北朝鮮の高官の中には「自分は金正日総書記のナンバーワンの側近だから、私に言えばきちんと伝える」と語る人も少なくない。また、アメリカや日本でも「日米の指導者や政府に意向を伝える。政府を動かす」といった話を、北朝鮮にもちかける人々も少なくない。

ところが、このやり方では真意がなかなか最高指導者に伝わらない。仲介に立つ人物や高官が、自分の利益を優先するからである。また、自分に都合の悪いことを最高指導者に言わないのが韓国と北朝鮮の政治文化である。

これは、「権威主義的政治文化」と呼ばれる。北朝鮮の高官も韓国の高官も。総書記や大統領に「いい話」しかしないのである。「悪い話」をすると、自分が責任を問われ追い出されるかもしれないと心配するからだ。

だから、失敗や悪い話はすべて「相手が悪い」のであり「相手が約束を守らない」ためとして処理されるのである。北朝鮮にとって理解できないことやまずいことは「日米韓の陰謀」や「米政府の謀略」と説明すれば、誰も反論できない雰囲気が平壌にはある。

南北首脳会談は、南北の間に横たわるこうした文化的障害を初めて乗り越えたことになる。側近の壁を乗り越え、首脳会談を実現した意味は大きい。