2015年7月10日金曜日

アメリカが長年培ってきた世界一の力

中国の成長は今後鈍化していくことが予想されるが、それでも、アメリカよりは相当上に行き、世界で一位を確保することと思う。インドも、科学技術の発達などの恩恵により、米中に次ぐ第三の地位を確保する可能性が高いだろう。しかし、これがそのままアメリカの凋落を示すわけではない。人口が数倍の中国がアメリカを規模で上回ってもそれ自体が大きな問題ではないからだ。我々は実質を見なければならない。アメリカは2050年になっても相当な強さを維持するものと思う。それは主に次の点があるからだ。移民を取り込むことで、人口の増加が続き、高齢化も抑制される。一方、中国では一人っ子政策のため、人口の減少と高齢化のダブルパンチを受けるとみられる。

国連の予想によると、2050年に中国では全人口の31パーセントが60歳を超えるのに対し、アメリカは25パーセントにとどまるとのことだ。科学技術の方面での強みは2050年にも引き続き発揮されるであろう。グークルやアップルを超えていく企業はアメリカから今後も次々に現れていくと思う。しかし中国に同じことは期待できないのではないか。中国やブラジルなどの国家資本主義がこれから力を伸ばしていくと思われるが、一方でアメリカの推進する自由主義・資本主義も、世界のもう一つの柱として力を持ち続けていくだろう。また、ハリウッド映画やハンバーガーやコーラなども残るのではないか。

やはり、アメリカが長年培ってきた世界一の力はそう簡単には凌駕できないということだ。しかし、一方でさまざまな問題も予想される。最大の問題は、4億人に増えるアメリカ国民が中流以上の暮らしをしていけるのか、ということだ。食糧やエネルギーの不安もあるが、それ以上に中流の生活を可能にするような仕事が果たして残っているのか、というのが大問題だ。そのころのアメリカは今よりも貧富の差がさらに大きくなっているだろう。一部のエリートはニューヨークやシリコンーバレーなどに住み、貴族のような生活をするようになるだろう。知的な仕事はバーチャルなものが主流になるだろうが、その反面、人々はリアルな結びつきを求めるため、ますます大都市への集中が進むと思う。

一方、一般層は相当苦しくなることが予想される。中国人の賃金は相当上がるだろうから、中国への仕事の流出は減るだろうが、伝統的な仕事が大幅に減ってしまい、失業者が大幅に増え、賃金が下がるだろう。結局、アメリカ分断への動きは今後さらに加速する、ということだ。そのため深刻な社会問題が数多く起きると思われる。これに対して政府が有効な対応策を提示できればよいが、楽観視できない。むしろ貧富の差が広がるほどイデオロギーが重視され、人々の対立をあおることになると思う。

国全体としては、経済力・軍事力で中国の後塵を拝するようになったときに、どう世界と向き合うか、という問題がある。アメリカは今まで世界一の国力で世界中に睨みをきかせることができた。しかし、二番手になったとき、自分の存在意義をどう見いだせるか。「世界一が当たり前」「世界一が大好き」のアメリカ人に心理的に与える影響も大きいだろう。結局、どうしても暗い方向の予測になってしまう。政治が転換し「イデオロギーよりも現実」という方向にうまく軌道修正することができなければ、国は実質的に分裂する、というシナリオが現実味を帯びてくる。