2012年4月10日火曜日

クロマグロ、漁獲枠削減でも高値には限界

東大西洋と地中海のマグロ資源を管理する大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の臨時会合が、3月26―27日に東京で開催された。参加した13カ国の政府代表や生産者、流通関係者は、漁獲規制の強化に向けた共同声明を採択し、11月の本会合に向けて一定の道筋をつけた。市場では今後、価格上昇は避けられないとの見方が支配的だ。しかし、消費の落ち込みなどを背景に、右肩上がりの値上がりについては懐疑的な声も多いのが実態だ。

ICCATは2006年、2010年までに漁獲枠を段階的に2割削減することを決定した。その後、日本商社の現地買い付け価格は2―3割高くなった。国内の小売店の店頭でも、それまで見られた100グラム980円といった特売はほとんど姿を消した。しかし、値上げに消費は追いついていない。景気は一段と不透明感を強めており、「安いものから売れている状態。クロマグロも例外ではない。販売量は1―2割落ちている」(鮮魚専門店)といった声が多い。築地市場でも「荷動きは停滞しており、高値唱えは通らない」(卸会社)。

地中海クロマグロの約7割前後は日本向けだ。世界的な魚食ブームを受けて、欧米や中国などで需要が増えているのは確か。しかし消費量の大半を日本が占めている状況は、5年、10年の期間では変わらない。「日本の消費が現状のまま落ち込めば、価格上昇にはおのずと限界がある」(卸)と見られる。

商品そのものに対するマイナスイメージが高まることも相場には弱材料だ。世界自然保護基金(WWF)などは、ICCATの規制が機能していないとして、欧州を中心にクロマグロの不買運動を活発化させている。この矛先が、クロマグロ最大の買い付け先である日本の商社や小売店に向けられる可能性は十分ある。このまま蓄養のために天然マグロを乱獲し続ければ、「畜養マグロ=資源悪化の張本人」という図式が定着しかねない。消費者が買いを手控え、価格が急落する可能性もゼロではない。

今回の東京会合では、日本商社などにも発言権が与えられた。しかし、実際には発言はほとんどなかったという。有数の扱い量を誇る大手商社からは「自然保護団体から攻撃を受けて企業イメージが落ちることは避けたい。ほどほどの価格上昇でおさまる漁獲規制になってくれれば」。そんな本音の声が漏れているという。