2014年9月10日水曜日

臨床実験に対する倫理上のガイドライン

「ニュールンベルクの倫理綱領」は、第二次世界大戦中にドイツのナチスが行なった非人道的な人体実験によってユダヤ人たちが大量虐殺された事件の反省に立って、このような非人道的な人体実験が二度と行なわれないようにと、ニュールンベルク国際軍事裁判(一九四五一四六年)がその経験を生かして作成したものである。

「ニュールンベルクの倫理綱領」の第一条の冒頭には、「医学的研究においては、その被験者の自発的同意が本質的に絶対に必要である」と宣言されている。そして「医学的研究の対象とされている人から確定的な同意を受理する前に、研究の性質、期間、目的、実施方法や手段、被験者となったために起こりうると考えられるすべての不自由さや危険、健康や人格に対する影響について、医学的研究の対象とされている人は、知らされる必要がある」などと明記してある。

「ニュールンベルクの倫理綱領」は、医学的研究における被験者の人権保護を対象としたものであるが、同様な倫理的原則が、その後、診療を受ける患者や、新しい医療技術や治療法などの研究のために治療を兼ねて行なう臨床研究や、患者自身の病気の治療とは関係のない臨床研究の対象となる患者にも適用されていったのである。今から振り返っても、この倫理綱領はイッフォームドーコンセントの手本としては最適なものであったといえよう。

一九四八年には世界人権宣言が、一九六四年には第十八回世界医師会総会で「ヘルシンキ宣言(一九六四年)」が採択された。一九六六年にはアメリカ医師会から「臨床実験に対する倫理上のガイドライン」が出され、同年初めてアメリカ連邦政府は、政府から研究助成金を受けているヒトを対象として実施する研究はすべて「施設内研究審査委員会」(Institutional Review Board =IRB)によって、政府の定めた倫理基準ならびに法的規制に抵触しないことにつき審査されることを義務づけた。

一九七一年に、アメリカ連邦政府は、最初の公式なガイドラインとして「ヒトを対象とした実験に関するアメリカ合衆国ガイドライン」を制定、公布した。一九七三年には、アメリカ病院協会が、とくに、患者が必要な情報を医師から受ける権利とインフォームドーコンセントを与える権利など、患者の人権を明確にした「患者の権利章典に関するアメリカ病院協会声明」を出した。