2014年6月7日土曜日

大血管障害

近年急増してきたとはいえ、日本における糖尿病患者の虚血性心臓病死亡率は、欧米に比べると極めて低いレベルにあります。それでは日本人が虚血性心臓病に罹りにくいのかというと、そうではありません。日系ハワイ住民には非糖尿病者、糖尿病患者ともに心筋梗塞による死亡が、日本在住の同胞より極めて多いことから、人種要因よりむしろ食生活を中心とした後天的要因か虚血性心臓病発症に強く影響すると考えられています。

図目に示しますように、一九七〇~一九七八年の日系ハワイ住民の虚血性心臓病による死亡は五〇・五%にのぼり。白人の五三・八%と大差がありません。一九七九~一九八八年にはハワイ州における生活習慣改善運動の効果があらわれ、日系ハワイ住民三七・二%、白人三八・四%と大幅に減少していますか、それでも日本で生活している日本人の約二倍にのぽります。

糖尿病患者の虚血性心臓病の特徴は、胸痛のない狭心症が多いことです。心筋梗塞発症前に全く胸痛(狭心痛)を感じたことがなかったり、心筋梗塞発症時も胸痛がないことがしばしばあります。冠動脈そのものの状態は、多枝病変(左右の冠動脈の二ヶ所以上の部位に重症な動脈硬化が起こり、血管内腔が閉塞あるいは高度に狭窄している)が多いことが冠動脈造影によって確認されています。

糖尿病患者では脳梗塞の発症が非糖尿病者の二~六倍と多く、境界域の糖尿病であっても脳梗塞が高頻度に発症します。数年前より普及してきた磁気共鳴検査(MRI検査)による多数例の検討によると、糖尿病患者では全く無症状であるのに複数(多数)の小さい脳梗塞(ラクナ梗塞)がしばしば見つかります。