2012年8月1日水曜日

ピークを過ぎた「山ガール」ブーム。しかし裾野は広がった。

散々、既出かもしれないが、「山ガール」ブームのピークは過ぎたようだ。先日、ティムコのアウトドアブランド「フォックスファイヤー」の展示会にお邪魔した。ティムコは釣り具メーカーから、ウエアも含むトータルなアウトドアブランドへと転換した異色の会社である。担当者によると「山ガールブームによって女性客が大幅に増え、アウトドアのすそ野は広がったが、当社ではブームのピークは過ぎたと見ている」という。

「山ガール」という呼称には以前から非常に違和感を持っている。どう見ても「ガール」でも「女子」でもない年代の女性が多数含まれているからである。「山女(やまおんな、やまじょ)」「山オバ」「ヤマダム」あたりの呼び名がしっくりくるように思う。ちなみに渓流魚のヤマメは漢字では「山女」と書く。

山ガールブームのピークは終わったと言っても、女性のアウトドアファンはある程度の人数を維持したままになる。彼女らの次の興味は魚釣りに移るのか、山の風景を撮影するアウトドアカメラに移るのかはわからない。あるいはその両方に分散するのかもしれない。山ガールというブームが盛り上がったおかげで、アウトドアウエアもずいぶんとデザイン化が進み、カラフルにそしてスマートに進化した。そういう意味では女性ファンの存在は大きかったと言える。

そんな中、アウトドア業界関係者によると、「ザ・ノースフェイス」の売り上げが好調であるという。もちろん女性客にも支持されている。「ザ・ノースフェイス」の好調が特筆されるべき理由は、通常の「山ガール対応」をしていないからだ。山ガール向けに各ブランドは、色柄をカラフルにかわいく変化させてきた。しかし、「ザ・ノースフェイス」は、シャープでスマートではあるものの、それほどカラフルな色は多用しない。むしろ、今季はダークでシックである。

通常のアパレル業界に置き換えれば、「カラフルというトレンド」を無視しているにも関わらず、トレンド層の消費者から支持を集めているという状態にある。これが可能であるなら、アパレル業界の各ブランドは何も苦労しないだろう。消費者は「ザ・ノースフェイス」というブランドに特別なステイタス性を感じていると思われる。

そこに至るまでには長い時間が費やされている。「ザ・ノースフェイス」を日本で展開し続けてきたゴールドウィンの粘り勝ちと言えるかもしれない。釣り具メーカーから転身してトレンド性と機能性を兼ね備えた自社ブラン「フォックスファイヤー」を開発するに至ったティムコ。長い年月を費やして、「ザ・ノースフェイス」のステイタス性を確立したゴールドウィン。この2社の取り組みをアパレル業界各社は参考にすべきではないだろうか。