2014年5月2日金曜日

証券化がもたらした余波

さて、金融の証券化の趨勢は米国において①農業債権の証券化への動き、②銀行側の非ローン・コミットメント額の増大、③銀行サークルからの各種リスクの溢出危険の拡大などの証券化の余波というべきものが発生してきている。

①は農業不況による農家の金融機関担保借入過大の救済策としての産業構造転換金融の一面もあり、②は近年銀行において急増しつつある偶発債務保証業務の趨勢であって、証券化の裏側の真実ともいうべき現象である。

つまり現実の資金調達は、証券化の進展によって多様化・複層化しつつあるが、貸付予約または短期または中長期証券発行のバックアップファイナンスである。

たとえばCP発行にともなう支払い保証枠の増大、スタンドーバイ信用状発行、各種先物取引銀行保証枠の拡大などの支払い承諾見返り勘定または簿外保証額(オフーバランス保証)の増大である。

これは銀行側にとっても総資産を膨らませることなく総資産収益率をあげうることであり、企業にとっても調達の多様化を確保しつつ、手許流動性節減、負債比率引下げなどが効果的に実現できることとなる。

③は証券化の進展によって、金融機関は次第にハイリスク・ハイリターン業務に近づきつつあるともいえる現象である。たとえばローンのサブパート、多種短期クレジット・ファシリティの拡大によって、求償権の移転または非移転の可能性のいかんによっては銀行の被求償権または偶発債務の拡大が増大する事態も起こりうるからである。

銀行間同士での偶発債務の交換・移転なら、いわばリスク回避のプロフェッショナルによるリスク・マネージメントの巧拙の問題ですむ場合といえる。しかし、証券化の本質は、さまざまなリスクの一般投資家または国民全般への拡散であるともいえるのである。

たんに市場効率化なり金融の自由化・国際化の趨勢だということで、一元的に証券化を推進することが絶対的善であるといえるか否かは、金融市場の秩序維持という鏡の裏の反面真理とのバランスが失せぬよう戒心の姿勢も必要かもしれない。